借地人様の法律相談

1 親の借地権付き建物を相続しましたが、使う予定がありません。放置すると地代や更新料がかかってきます。何か良い方法はないでしょうか。

 借地権の譲渡をする方法があります。借地権付き建物を第三者に売却することです。

 借地契約を解約して地主に土地を返す場合には原則として建物を取り壊して更地で返す必要があります(原状回復)。しかし、借地権は、東京では更地の6~7割の価値がありますから、仮に建物が老朽化して価値がなくとも、第三者に売却することは可能です。借地権付き建物を売却してしまえば、建物を取り壊す必要がなくなります。

 もっとも、借地権の譲渡をするには、地主の承諾が必要になります。これについては、3で説明します。

2 借地権付き建物の譲渡先(買主)はどのようにして見つければよいですか

 一般には不動産仲介業者に買い手を探してもらいます。最近は借地権付き建物を買い取る不動産業者も増えてきましたので、見つかる可能性は高いです。当事務所でも仲介の不動産業者のご紹介は可能です。

3 借地権付き建物の買主は見つかりましたが、地主が承諾をしてくれません。どうしたらよいですか。

 裁判所に地主の承諾に代わる許可をもらうため、借地非訟を申し立てるのがよいです。地主が承諾をくれなくても、裁判所が、譲受予定者の資力等から、借地権を譲渡しても問題ないと判断すれば、譲渡の許可を出します。この許可があれば無断譲渡にはなりません。

 当事務所では、買主様のご紹介から裁判所の譲渡許可までの一連の手続きをパッケージでご提供しておりますので、ご相談ください。

4 地主に譲渡承諾料を払う必要はありますか。また、相場はどの程度ですか。

 払う必要があります。東京地裁の借地非訟の場合の譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%です。借地権価格は、更地の6~7割とされることが多いです(路線価図に借地権割合が記載されています。)。

 例えば、時価2000万円の土地で、借地権割合が6割だとすると、譲渡承諾料は、

2000万円×0.6×0.1=120万円となります。

5 地主の介入権(優先譲受の申立て)とは何ですか

 借地権譲渡許可を求める借地非訟が申し立てられると、見ず知らずの第三者に借地権が移ってしまうのを嫌う地主は、「では、自分が借地権付き建物を買う」と申し出をすることができます。これを介入権(優先譲受の申立て)といいます。この介入権の申し出がなされると、地主が優先的に借地権を取得します。譲受予定者(買主)には、気の毒ですが、借地人としては、どちらに買ってもらっても、手取りは同じということになります。

 すなわち、仮に、1200万円(建物ゼロ円、更地2000万円の6割の1200万円が借地権価格とする)での買主候補者がいたとして、譲渡許可が得られると1200万円で売れますが、地主に120万円の承諾料を支払いますから、手取りは、1080万円です。

 他方、介入権価格は、これとの均衡から、借地権価格ー譲渡承諾料という計算で求められます。よって、介入権価格も1200万ー120万=1080万円です。

 借地非訟申立前は、自らは借地権を買わないと言っていた地主も、いざ、非訟が始まり、具体的な買主が現れると介入権を行使する、ということは少なくありません。

6 譲渡承諾料や介入権の基準になる更地価格はどのように決められますか

 まずは、当事者が路線価や固定資産評価額や公示地価などを参考に協議をしますが、折り合わないときは、最終的には、裁判所の鑑定委員会が鑑定を行って決めます。通常の訴訟の場合は、数十万円~数百万円の鑑定費用を支払う必要がありますが、借地非訟の鑑定委員会の鑑定には特段費用は掛かりません。

7 譲渡許可の借地非訟を依頼した場合の弁護士費用はどのくらいですか

 ①着手金 20万円と消費税

 ②報酬金 手取りの5%と消費税 

  前記質問5の例ですと、1080万円が手取りですからこの5%は54万円になります。

8 更新の時期が近づいてきましたが、更新料を支払う必要はありますか

 更新料の支払義務は、契約書に記載があるかや、過去の支払い実績など諸般の事情を総合して判断されます。裁判例も様々ですので、具体的な状況をご相談いただき、ご回答をさせていただくことになります。お気軽にご相談ください。

9 地代の増額請求が来ました。応じる必要はありますか。

 地代の増額幅は、過去に地代の額を合意した時点(直近合意時点)からの経済変動、固定資産税の上昇、周辺相場との乖離などを総合判断して、最終的には裁判所の鑑定で決着がつきます。地主の増額幅はあくまで地主側の「主張」ですので、簡単に応じる必要はないと思います。裁判で公平な判断を求めるのか、紛争の早期解決を優先してそこそこの額で折り合うのか、慎重に検討することになります。

エルピス総合法律事務所 東京都中央区新富2-14-5ACN銀座イーストビル8階 
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